■75mmテレマーカーが選んだ「軽さと信頼性の最適解」
テレマーク歴20年。
北海道のパウダーを中心に滑り続けてきた。
今シーズンは板もブーツもおニュー。
でも正直に言うと、
今シーズン一番気に入っているギアはビンディング。
それが
Voilé TTS Transit。

Voilé(ボレー)TTS Transitは、PLUM製テックトゥとVoilé伝統のワイヤーカートリッジを組み合わせた軽量テレマークビンディングです。
これまで長く75mmビンディングを使ってきた自分が、
軽量テレマークビンディングを探した結果たどり着いた答えがこのビンディングだった。
この記事では
・なぜTTSを選んだのか
・実際の滑り心地
・NTNとの比較
・メリットとデメリット
まで含めて、実体験ベースでガチレビューしていく。
あくまでなかきちの主観であり、特にこのビンディングはテレマークの有識者の中でも評価がしっかり分かれている。
その理由も書いていきます。
■テレマークビンディングの進化
元来、テレマークスキーの道具は
軽量でシンプルな構造が特徴だった。
初期のテレマークビンディングは
いわゆる
スリーピン(3ピン)ビンディング。
構造は非常にシンプルで軽量。
山を登って滑るという
テレマーク本来のスタイルには
とても合理的な道具だった。
しかし時代とともに
テレマークスキーの滑り方も進化していく。
●滑走性能を高めたワイヤービンディング
より安定した滑走性能を求めて
登場したのが
ワイヤービンディング。
ブーツを後ろから引くワイヤー構造により
- ターンの安定性
- 滑走性能
が大きく向上した。
それまでのスリーピンに比べ
よりアグレッシブな滑りが可能になった。
●より強いスプリングへ
さらにスキー板の進化も影響する。
板は
- 太く
- 長く
- 高性能に
なっていった。
それに伴いビンディングにも
より強いスプリング
が求められるようになる。
その結果
- ターンの安定性
- ファットスキーの操作性
は大きく向上した。
●登行モード付きビンディングの登場
しかし強いスプリングには
ひとつ大きな問題があった。
歩きにくい。
スプリングの抵抗が強く
登りでは負荷が大きくなる。
そこで登場したのが
登行モード付きビンディング。
代表的なモデルは
- G3 Targa Ascent
- Voilé Switchback
- Black Diamond O1
滑走時と登行時で
モードを切り替えることで
登りやすさを確保した。
●その代償は重量
しかしこの進化には
代償もあった。
それが
重量。
強いスプリング
複雑な構造
登行モード機構
その結果
テレマークビンディングは
どんどん重くなっていった。
●AT(アルペンツアー)の軽量革命
一方、アルペンツアーの世界では
別の進化が起こる。
それが
テックビンディングの登場。
テックピン方式により
ATビンディングは劇的に軽量化された。
結果として
テレマークより軽く登れる
という状況が生まれる。
●テレマークにも訪れた軽量革命
そしてこの流れは
ついにテレマークにも波及する。
それが
テックピンを使ったテレマークビンディング。
代表的なモデルは
- 22 Designs Lynx
- Meidjo 3
- Voilé TTS Transit
この世代のビンディングは
- 超軽量
- 登りやすい
- バックカントリー向き
という特徴を持つ。
●その中でもTTSは少し特殊
この中で
Voilé TTS Transit
は少し特殊な存在。
テックピンを使いながら
ヒール側は
伝統的なワイヤーカートリッジ構造。
つまり
75mmの滑り心地を残したまま
軽量化を実現したビンディング。
それが
今回レビューする
Voilé TTS Transit。
■これまで使ってきたビンディング
まず前提として、これまで使ってきたビンディング。
- G3 Targa
- Black Diamond O1
- Black Diamond O3
いわゆる75mmワイヤー系ビンディングを長く使ってきた。
75mmの魅力は
・シンプル構造
・壊れにくい
・テレマークらしい滑り心地
ただし弱点もある。
登行モードがついているモデルは重い。
20年前は正直重さなんて対して気にかけたことが無かった。
だがしかし、今やバックカントリーや登り返しでは
この重量がじわじわ効いてくる。
そこで今回ビンディング選びで重視したのがこの3つ。
●ビンディング選びで重視したポイント
① 堅牢性
② 軽量性
③ 使い心地
バックカントリーでは
壊れるギアは論外。
しかし軽さも重要。
そのバランスを考えて
最終的に選んだのが
Voilé TTS Transit。
■TTS Transitとは?
TTS Transitは
テックピン+ワイヤーカートリッジ
という構造のテレマークビンディング。
簡単に言うと
テックビンディングのトゥ+75mmの滑り心地
というハイブリッド構造。
NTNとも75mmとも違う
新しいタイプのテレマークビンディング。
●堅牢性(最重要ポイント)
バックカントリーでは
壊れないことが最重要。
その点でTTS Transitはかなり信頼できる構造になっている。
●そもそもVoiléとはどんなメーカー?
Voiléはアメリカ・ユタ州のバックカントリーメーカー。
テレマークスキー全盛期からビンディングを作り続けており、特に75mmワイヤービンディングの実績は非常に長い。
スイッチバックや3ピンケーブルなど数多くの名作を生み出してきたメーカーであり、シンプルで壊れにくい設計思想に定評がある。
私がTTS Transitを選んだ理由の一つも、このVoiléの長年の実績に対する信頼感だった。
●トゥーピースはPLUM製
トゥーピースは
『PLUM』が製造。
◻︎PLUMとはどんなメーカー?
TTS Transitのトゥーピースは
フランスのメーカー
PLUM
が製造している。
ただ正直に言うと、
日本ではあまり知られていないメーカーだと思う。
スキーをしている人でも
名前を聞いたことがない人の方が多いかもしれない。
その理由はシンプルで、
PLUMの製品は主に
ヨーロッパのバックカントリー向けATビンディング
として展開されているから。
日本では流通量もそれほど多くなく、
店頭で見かける機会も少ない。
そのため
知名度はそこまで高くない。
⸻
◻︎ヨーロッパでは評価が高いメーカー
しかしヨーロッパの山岳スキー界では
PLUMはかなり評価の高いメーカー。
特に
• 山岳ガイド
• バックカントリースキーヤー
• スキーモ選手
などに愛用者が多い。
PLUMはもともと
フランス・シャモニー近郊の
精密機械加工会社。
航空機や精密機械の
金属加工技術を持つ会社が
スキービンディングを作り始めたブランド。
そのため
金属加工の精度が非常に高い。
⸻
◻︎PLUMビンディングの特徴
PLUMのビンディングには
いくつか特徴がある。
⚪︎削り出しアルミによる高剛性
PLUMのビンディングは
アルミ削り出しパーツを多く使用。
そのため
• 剛性が高い
• 耐久性が高い
という特徴がある。
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⚪︎シンプルな構造
PLUMのビンディングは
構造がシンプルで可動部も少なく、バックカントリー用途では信頼性の高い設計だと感じる。
バックカントリー用途では
かなり重要なポイント。
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⚪︎軽量
PLUMのビンディングは
AT界でも軽量モデルが多い。
山岳スキーやロングツアーなど
軽さが重要な用途でも人気が高い。
PLUMはATビンディングの世界では
軽さと耐久性で有名なメーカー。
つまり
テック部分は専門メーカーが作っている。
これはかなり安心材料。
■ワイヤーカートリッジはVoilé(ボレー)
ヒール側は
●Voiléの伝統的なワイヤーカートリッジ構造。
Voiléは75mm時代から
・ワイヤーの耐久性
・シンプル構造
で評価が高い。
構造も非常にシンプル。
・テックトゥ
・ワイヤーカートリッジ
基本これだけ。
余計な可動部が少ないので
壊れにくい。
バックカントリーでは
これはかなり重要。
●軽量性
重量は
約550g(片足)
75mmビンディングと比べると
かなり軽い。
さらに特徴的なのが
ハイク時にワイヤーを外せること。
●ハードワイヤー取り外し
ハードワイヤーは簡単に取り外せる。
【写真】ワイヤー取り外し



プレート引っ張ってフックを立てて外すだけ。
めっちゃ簡単!
滑走中も含め今の所は誤作動は無し!
工具は不要。
●登りではさらに軽くなる
ワイヤー重量は約264g。
そのためハイク時にワイヤーを外すと、ビンディング重量は約286gまで軽量化される。
一般的なツアー向けテックビンディングと比較しても非常に軽く、長いアプローチや登り返しでは大きなアドバンテージになる。
ワイヤーを外さなくても登行は可能だが、少しでも軽くしたい場面ではありがたい機能だ。
外さない場合は固定出来るので支障なし!

■セッティングと構造
●テックピン装着
装着はテックビンディングと同じ。
【写真左】テックピン装着前 この位置で体重を乗せると
【写真右】テックピンがバネの力でブーツの穴に入る仕組み



最初は少しコツがいるが
慣れれば問題なし。
●ピボット位置調整
TTS Transitは
ピボット位置を3段階調整可能。

これにより
・よりナチュラルな動き
・より強い反発(写真の位置)
など調整できる。
●スプリング設定
カートリッジは
・サイズ
・硬さ
を選べる。
メーカー目安では
スモール / レギュラー
→ Switchbackと同程度
ラージ / レギュラー
→ SwitchbackとX2の中間
私は
レギュラースプリング
を選択。
ファット板でも踏めるが
硬すぎない。
ちょうどいい反発。
■実際の滑り心地
ここが一番重要。
結論から言うと
かなり75mmに近い。
●踵の上がりが自然
テックピボットのおかげで
踵の上がりが自然。
違和感が少ない。
●ワイヤーカートリッジの反発
後ろから引く構造なので
75mmワイヤーの感覚に近い。
・前足荷重がしやすい
・反発が自然
●パウダーとの相性
北海道のパウダーでも
かなり滑りやすい。
ナチュラルな反発なので
浮遊感が出やすい。
■リンクス・Meidjo3ももちろん気になった
比較対象になったのが
22 Designs Lynx
軽量NTNビンディング。
正直かなり迷った。
●リンクスの魅力
・軽い
・ステップイン
これはかなり便利。
アルペンスキーの感覚で楽ちん
リーシュはあるけど
●気になった点
初期モデルでは
・プレート破損
・ブーツ相性
などの話もあった。
特に
Scarpa
との相性問題。
自分のブーツは
Scarpa TX Pro
なので
ここは少し気になった。
(現行モデルでは解消されているらしい、知らんけど)
●Meidjoという選択肢
もう一つ最後まで悩んだのがMeidjoだった。
軽量性や登行性能は非常に魅力的で、バックカントリー用途では高い評価を受けているビンディングだ。
実際、Lynx・Meidjo・TTSは現在の軽量テレマークビンディングの代表格と言ってもいいと思う。
ただ個人的には、Meidjoは構造が少し複雑に感じた。
もちろんそれが悪いという意味ではない。
実際に多くのテレマーカーが使用している実績もある。
しかしバックカントリーでは、私は昔から
「シンプルな構造ほど信頼できる」
という考えを持っている。
そのため最終的には、
PLUM製のテックトゥとVoiléのワイヤーカートリッジというシンプルな構成を持つTTS Transitを選択した。
●それでもTTSを選んだ理由
決め手は
PLUM製のテックトゥとVoiléのワイヤーカートリッジというシンプルな構成と
ケーブルの滑り心地。
75mmを長く使ってきた自分には
滑りが想像できた。
これが大きかった。
■正直なデメリット
レビューなので
デメリットも書いておく。
●ステップインではない
装着時はしゃがむ必要あり。
ただ75mm経験者なら
手間は今までと同じくらいかな?
問題なし。
どうせリーシュ付けるので
結局しゃがむ。という私の意見。まあ、ブレーキ付きのモデルならそれもないが笑
●テックピン合わせ
慣れるまで少し難しい。
深雪では少し苦戦する。
●スプリングテンション
ネジ式なので
振動で緩むことがある。
でもこれは75mmでも同じ。
締め直せばOK。
●強度不足説(諸説あり、まだこのモデルでの発生の報告は聞いていない)
今まで散々堅牢性を謳っていたのにうそ〜んって思われた方もいるかと思いますが
パーツ単体ではなく板とスプリングスカートリッジを繋いでいるベースプレートがビス4ヶ所で留められていてそこがいずれもげるのではないか?という理論上の一つの説である。
これに関してはまだこのモデルでの報告は聞いていない。
もげたらすぐ報告します!
■ゲレンデメインなら別の選択肢もある
一方で全てのテレマーカーにTTS Transitをおすすめするわけではない。
例えば
- ゲレンデメイン
- 高速カービング
- 硬いコブ
- ハードバーン
を滑るなら
22 Designs Outlaw XやRottefella Freerideの方がパワー伝達や耐久性は一枚上手だと思う。
TTSはあくまで
軽量性
ツアー性能
75mmに近い自然な滑り心地
を重視したビンディング。
方向性が違うのである。
●向いている人
・75mm経験者
・75mmの滑りが好き
・軽さを求める人
・バックカントリーをやる人
●向いていない人
・しゃがみたくない人
・ステップインが絶対いい人
・強いバネが欲しい人
・ゲレンデメインで超高速カービングやコブ斜面を攻める人
■専用クトー(スキーアイゼン)がある
TTS Transitには
別売りで専用クトー(スキーアイゼン)が用意されている。
バックカントリーでは
- 朝一の締まった斜面
- 風でクラストした斜面
- トラバース
- 急斜面の登り
こういう場面は必ず出てくる。
そういう時にクトーがあるかどうかで
登れる斜面が変わる。
これは実際に山に入る人ほど分かると思う。
●クトーはPLUM製
TTS Transitのクトーは
トゥーピースと同じくPLUM製。
つまり
- トゥーピース → PLUM
- クトー → PLUM
- ヒール → Voilé
という構成。
この組み合わせは
バックカントリー用途としてかなり合理的だと思う。
●山で使うことを前提に作られている
専用クトーがあるということは
このビンディングは完全にバックカントリー用途を想定して作られている
ということ。
軽いだけのビンディングではなく
- 登る
- 滑る
- 山で使う
そこまで考えられているビンディングだと思う。
●なかきち的ポイント
正直、
専用クトーがあるかどうかは結構重要だった。
バックカントリーで使う以上、
軽さだけじゃなくて
「ちゃんと登れるか」
が大事。
その意味で
TTS Transitは山で使うビンディングとして
よく考えられていると思う。
■まとめ
Voilé TTS Transitは
・75mmの滑り心地
・テックの軽さ
・シンプルで壊れにくい構造
この3つを高いレベルで両立したビンディング。
自分にとっては
「75mmの進化版」
そんなビンディング。
今シーズン使ったギアの中で
間違いなく一番のお気に入り。
テレマーク歴20年の経験から言っても
かなり完成度の高いビンディングだと思う。
■なぜ私はTTSを選んだのか
軽さだけならLynxもMeidjoも魅力的だった。
ステップイン機能も正直羨ましい。
しかし私が求めていたのは単純な軽さではない。
75mmビンディングで長年滑ってきた人間が違和感なく移行できる滑り心地。
そして山で安心して使えるシンプルな構造。
その両方を満たしていたのがTTS Transitだった。
だから私はLynxでもMeidjoでもなく、TTS Transitを選んだ。
■最後に
今でも75mmビンディングが好きだ。
G3 TargaもO1もO3も、それぞれに魅力がある。
ただ年齢を重ねるにつれ、登り返しや長いアプローチでビンディングの重さを感じるようになった。
だからといって75mmの滑り心地は捨てたくない。
そんなわがままを叶えてくれたのがVoilé TTS Transitだった。
もし私と同じように
「75mmは好きだけど、もう少し軽くしたい」
と思っているなら、一度試してみる価値はあると思う。
ほなまた🖐️
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